2010年8月13日金曜日

書評: スティーブ・ジョブズ驚異のプレゼン

今回のタイトルは「スティーブ・ジョブズ驚異のプレゼン(人々を惹きつける18の法則) カーマイン・ガロ著」だ。意外と分厚くて400ページ近くある。

「何故、この本を知ったのか?」

それは、最近聞き始めたTBSのDig(ディグ)というラジオ番組での紹介がきっかけだ。僕は気になる書籍があるとすぐに携帯にメモをとるようにしている。この本の紹介を聞いたとき、気がつくとメモをとっていた。

「何故、この本を買ったのか?」

今思えば、この本を買う気になったのは「プレゼン」と「Steve Jobs(スティーブ・ジョブズ)」という2つのキーワードが心に響いたからだ。

「プレゼン」という言葉に心が向いた理由は、「仕事柄プレゼンをする機会が非常に多いため、どうやったら、今以上に上手にプレゼンをできるようになるのか」ここ数年来、そればかり考えていたからだ。実際、この本を読む前には、やはりプレゼンに関わるマッキンゼーの本を読んだばかりだった。

そして、「スティーブ・ジョブズ」。彼のプレゼンが多くの人々を魅了するものである、ということを僕はよく知っていた。彼の「スタンフォード大学での卒業式の祝辞」はあまりにも有名だ(ただしこれはプレゼンではなくスピーチだが・・・)。これ以外にも、様々な新製品の発表のときに、何気ないそぶりで最高の演出・プレゼンをする。

「読み始めてどう感じたか?」

正直、最初は「うーん」と(悪い意味で)唸ってしまった。というのも、もっともらしいことを述べてはいるのだが、よくよく読むと「ジョブズは、なにが凄いだの」「これが凄いだの」と書いてはあるのだが、著者のその表現の大半が単に大げさな比喩を使っているだけで、あまり目新しさを感じることができなかったからだ。たとえば、著者のプレゼン向上のテクニックの1つに「プレゼンには必ず悪役を登場させろ」という言い回しがある。なんのことはない、これは「必ずプレゼンの中で解決させたい課題を明確にしなさい」ということを言いたいだけだ。本当、大げさだ。

ところが・・・

である。初めは多少馬鹿にしながら読んでいたが、読み進めていくうちに自分の知らなかったポイントや、なんとなく知ってはいたけれども、そこまで明確に意識していなかったな、というポイントがポロポロと出てきた。

「何が心に残ったのか?」

そして400ページの本を一気に読み終えて、(本には一切目を通さずに)感じたことを振り返ってメモに書き出してみた。以下のようなことである。

・ストーリー作成に7割、資料作成に3割の時間を割くこと
・説明するポイントを3つに絞ること
・わかりやすい言葉を使い、具体的なイメージがわくように説明すること
・プレゼンは本当にシンプルにとどめること(箇条書きも極力使わない)
・10分同じ話し方をしていると人は飽きるという法則を念頭にいれておくこと
・事前に十分な時間をとってしゃべりの練習をすること

の6つだ。

なお、この中で”シンプル”という言葉を使っているが、ここでいう”シンプル”とは、本当の本当に「シンプルにする」という意味だ。1スライドにおける文章量を1行~2行程度におさえるくらいに、だ。スティーブ・ジョブズは、多くの場合、スライド上に絵を1つだけ描いて見せたり、新聞の見出し程度の文章しか出さない(箇条書きなどは使ったことがないらしい)。後はそれを見せながら必要なポイントをジェスチャーをまじえながら、しゃべるのである。著者いわく、プレゼンに情報をたっぷりいれる人は

「単に怠け者である」

つまり、しゃべりでカバーする自信がないからなんでもかんでもスライド上に書いてしまう・・・、それは怠惰以外の何者でもない、と言いたいのだ。

そしてもう1つ、「十分な時間をおってしゃべるパートの練習をすること」という教訓。これはさりげなく胸に響いた。ジョブズの何気ない格好で、友達に話しかけるかのようなしゃべり、でも、人々を魅了してやまない、あれは全部、緻密に計算して、ものすごい時間をかけて練習している成果、という著者の言葉には、「なるほど」という言葉以外、思い浮かばなかった。

「この本は誰にお勧めか?」

プレゼンする機会がある人、みんなに役立つ本であると思う。この本は、自分にとっても・・・・多少、値は張ったが・・・役立つ部分は多かった。役立つ分が多かったといっても実際に身につかなきゃ意味がない。

さて、実は10月初旬にプレゼンの機会があるのだが、ここで学んだいくつかはそのときに試せるかもしれない・・・。それによってはこの本の評価が変わったりして・・・(笑)

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