2013年8月3日土曜日

書評: モンスター

モンスター
出版社: 幻冬舎文庫


■一人の女性の人生物語

あまりにもその場に不釣り合いな女性。その土地に似つかわしくない雰囲気とまばゆいほどの美しさ・・・誰もがハッと振り返ってみてしまうオーラを放つ女性(美帆)が、ある日突然その島にやってきてレストランを開いた。その島には、一見何の縁もゆかりもなさそうな美帆だが、実はかつてそこに住んでいたことがある。そう、彼女こそ、かつてモンスターと呼ばれるほど醜悪な顔の持ち主・・・その張本人だった。そんな彼女が、どうやって美しい変貌を遂げたのか。いったいなんのために、つらい想い出しか残らない島に戻ってきたのか。そこには数十年という時の流れを超越した一人の男に対する狂おしいまでの情念があった。

■精神面のリアルな描写が特徴的

モンスターと呼ばれるほどの醜悪さ・・・と言われると、いくらなんでも非現実的な話に聞こえてしまう。だが、この小説に描かれる登場人物達の”心の描写”はあまりにもリアルだ。現実世界のそれと全く変わらない。リアル過ぎて、フィクション小説であるにもかかわらず、この本に人生のリアルな答えを求めてしまう。

人・・・いや、女性ってやつはそんなに強い情念を持てるものなのか? やっぱり男性が女性に求めるものは外見なのか? やっぱり整形手術はありなのか? それとも、程度の問題なのか? 外見だけで女性を選ぶ男性は幸せになれるのか? 外見の美しさで男性を手に入れた女性は幸せになれるのか? 苦労した分だけ、幸せになるチャンスももらえるものなのか? 想いは成就するのか?・・・と。

「モンスター」を読んでいると、そんな疑問が次々にわき起こってくる。そして、その答えが知りたくて、頁をめくる手が自然と速くなる。百田尚樹独特の読みやすい文章も手伝って、気がつけばあっという間に読み終えてしまっている。あっという間だが、読み終えた後はしばらくボーッとさせられる。自分の持っていた疑問に対する答えは何だったのか、その疑問は晴れたのかなどと、小説の結末を受け入れるのに、いや、自分の考えを整理するのに、ちょっとした時間が必要になるのだ。

■人生を追体験できる一冊

女性の情念の強さ。男性の女性に対する気持ち、女性の男性に対する気持ち・・・その重さ、変化の仕方・・・、本心・・・。非常にリアルだ。決して明るいストーリーではないので、パーっとしたい・・・という方にお勧めはできないが、人生ってやつを、女の・・・いや男の本質ってやつを、追体験したいなら、オススメできる一冊だ。


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