2015年6月7日日曜日

書評: シンプルに考える

つい先日、Amazonで電子書籍の半額祭りに出くわした。そのときに、ざーっとタイトルを斜め読みする中で購入した一冊だ。LINEの元社長・・・ということでそれなりに興味がわいたのだ。

シンプルに考える
著者: 森川 亮
出版社: ダイヤモンド社



どうだろう・・・。読み始めて読み終わるまで、かかったのは1時間弱だったろうか。速読できる人なら、十数分で読めるかもしれない。


本書は、LINEを成功させた森川元社長のビジネス成功の哲学「シンプルに考える」を徹底的に説いた本である。シンプルとは何か? 具体的には、「会議をしない」「目標や計画を設定しない」「情報共有しない」「教育をしない」・・・などなど。ただし、これだけ聞くと何か挑発的に聞こえなくもない。事実、私も読み始めは「いや、いいたいことは分かるが、言い過ぎでは!?」などとブツブツつぶやきながら読んだものだ。

ところが、本書を読み終わって数時間後、冷静になって振り返ってみると、色々なことが腑に落ちてくる。要するに彼が言いたいことは、「本質を見失い、手段におぼれるな!」ということだったのだろう。ビジネスを成功に導くためには、シンプル・・・だけど徹底的に考え抜け・・・顧客目線にたって・・・。それだけである。しかし、それだけ・・・のことがなぜか難しい。「差別化」「情報共有」「人材教育」など、魅惑的なキーワードがつい口を突いて出るが、それすらも顧客を喜ばせる・・・ことを考えれば手段の一つに過ぎない。でも、いつの間にか、そうしたキーワードによっていく中で、本筋を見失ってしまう。

じゃぁ、どうすれば?となるわけだが、「だから、シンプルに考えればいい、って言ってるだろ!?そうした手段におぼれるな。顧客が見ている方向を一緒に見ろ!徹底的に・・・」という森川氏の声が飛んできそうだ。そういえばちなみに、先日読んだ「海賊と呼ばれた男」のモデルになった出光佐三(いでみつさぞう)氏も、自分の人生の軸になったのが、「とにかく徹底的に考え抜く」ということだったと語っていた。「考え抜く」はビジネス成功のキーワードなのかもしれない。

私も、いま新規ビジネスの立ち上げのために活動しているのだが、今一度、この哲学を胸に、向き合い直してみようと思う。思えば、ビジネス立ち上げに当たり、色々な人にアポをとって、業界内の色々な人の声を聞いてはいるが、肝心のユーザの声を拾えていたか・・・というと、自信を持ってYESと言える状態ではなかった。本当にそんなちょっとした活動の変化で、結果が大きく変わるのか?・・・そう思ってしまいそうになるが、実際、変わるのだろうと直感的に思う。我が人生を振り返ってみても、自分の想像中心で進めた事業は、思ったほどの成果をあげなかったことが多い。

具体的な成功手法・・・をことこまかに書いてある指南書・・・というよりも、どちらかというと哲学書に近いのではと思う。やれMBAだ、やれ国際規格だ、やれ●●分析手法だ・・・と私のように頭でっかちになりがちな、手段におぼれがちな人の頭の目を覚ますには、ちょうど良い本だ。


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