2016年1月1日金曜日

書評:人生を面白くする本物の教養

ライフネット生命会長兼CEO、出口治明氏の人生論が語られている本だ。

人生を面白くする本物の教養
著者:出口治明(でぐちはるあき)
出版社:幻冬舎新書 



■人生を面白くする出口流生き方術
出口会長の人生論とは「面白く生きるために何を大事に行動しているか?」ということ。では何を大事に?と言えば、「本物の教養を身につける」こと。本物の教養を身につければ、人やモノに対して興味を持てるようになるし、何よりも、人も自分に対して興味を持ってくれる。

だから本書のタイトルは「人生を面白くする本物の教養」。「本物の教養」を身につけるために、出口氏自らが実践してきた方法を優しく紹介してくれている。それが本書だ。

■そもそも出口氏の語る“本物の教養”とは
では、本物の教養とは何か? 出口氏の主張を私なりの言葉でまとめると、大きく3段階に分けて説明できる。

第一段階は、単に記憶しただけの情報で何の役にも立たない知識。出口氏は、これは雑学であり教養ではない、と切り捨てる。第二段階は、覚えた情報でも、何かに役立てたり楽しむために使える知識。たとえばサッカーを楽しむために覚えたゲームのルールなどがそう。出口氏はこれを“教養化した知識”と呼んでいるが、本書のターゲットではない。そう、目指すのは、第三段階。第三段階とは、自分の頭で何かを考え、自分の意見を持つためのベースとなる知識。たとえば「日本の経済問題を解決するためには、人口を増やすしかない。だから移民を受け入れるべきだ」という専門家の話があったとして、それを何も考えずに受け入れて、その通りに行動するならそれは第二段階の教養化した知識にしか過ぎない。そうではなく「なぜだ!? いや、その考え方は間違っているのでは?自分はこう思うから、こっちを信じてこのように行動しよう」「いや確かにそうだ。実際、ここはこうだから・・・」などと自らの頭で考え、発展させることができて初めて…出口氏の言う本物の教養と言える。

表現は異なるが、「学び続ける力」の著者、池上彰氏も全く同じことを言っている。

■出口氏推奨の「数字・ファクト・ロジック」が醸し出す本書の魅力
出口氏が実践してきたことって何だろう。本の帯にもあるが、根本は本を読み、人に会い、旅をし、考え抜くというもの。そして、考える際には「数字・ファクト・ロジック」で考えるというもの。こうした観点から、新聞の読み方、新しい分野の勉強の仕方、人との付き合い方、興味の深堀の仕方など、実践方法の紹介は、多岐にわたる。

「なんか一般的な話だな」と思うかもしれない。ある意味、そうだ。だが、本書が魅力的なのは、出口氏が提唱する「数字・ファクト・ロジック」が、本書にも随所に現れているからだろうと思う。何かを主張する都度、出口氏本人の経験談をイチイチ丁寧に紹介している。社会人なりたての頃の話、ロンドンでの滞在期間中の話、知人の影響を受けて旅行したときの話。本書の後半では、今、現代社会を賑わせているなかなか答えの見つからないテーマ・・・たとえば原発問題や消費税問題に関して、出口氏自身の経験談、すなわち本人の「数字・ファクト・ロジック」に基づいた考えを披露してくれている。

■学びも、刺激も
生き様や価値観がとても似ていると思った。私もイギリスにいたし、起業という共通点もある。規模感が全く違うけど。面白く生きたいというのは私の強い想いでもある。仕事が全てではない、むしろ、それ以外の方がはるかに重要という価値観も一緒だ。

だから、私自身は、新たな学び…というより、改めて自分の中でぼんやりしていた価値観や実践すべき事項がくっきりと映し出された感じがした。刺激が多かった。たとえば出口氏は「週に2〜3冊」読んでいるそうだ。自分は週にせいぜい1冊程度。負けてられないなと思う。

先日読んだ本「シンプルに考える」の著者、LINEの元社長、森川亮氏もそうだった。いま注目されるような人たち、グローバルで通用するような人達は全て自分の頭で考える・・・いや、考え抜く人たちばかりだ。そうなりたい人なら、本書を読むと同時に、少しでも似たようなことを実践してみてはいかがだろうか。


【教養というキーワードでの類書】
学び続ける力(著者:池上彰)
奇跡の教室(著者:伊藤氏貴)
自分を変える読書術(堀紘一)

0 件のコメント:

書評: 3 行で撃つ <善く、生きる>ための文章塾

  「文章がうまくなりたけりゃ、常套句を使うのをやめろ」 どこかで聞いたようなフレーズ。自分のメモ帳をパラパラとめくる。あったあった。約一年前にニューズ・ウィークで読んだ「元CIAスパイに学ぶ最高のライティング技法※1」。そこに掲載されていた「うまい文章のシンプルな原則」という記...